水でめざめる妊娠力
まえがき

  この本は、「水と海の力」を借りて、妊娠しやすい体をつくるためのものです。

  「水と海と妊娠」、はじめて耳にする人は、不思議に思うかもしれません。

  しかし、ちょっと考えてみてください。地球は水の惑星です。この世界の3分の2を占めているのは「水」。生命は、その海からもたらされたものです。人間の体もまた、その70%が水分で構成されています。

  食べ物がなくても、人間はしばらくは生きていけますが、水分が足りなくなると、たちどころに死んでしまいます。水は、人類の誕生そのものに深くかかわり、かつ私たち人間が生命活動を維持するうえで、根本的な「成分」なのです。

  胎児もまた、母親の体内で「羊水」に守られて育まれていくのです。

  私は、長年IVF大阪クリニックで新しい形の不妊症に取り組み、多くの成果を上げてきましたが、ずいぶん昔から、この「水の力」に注目していました。

  その経験からはっきり言えることは、
不妊治療にとってもっともたいせつなものとは、的を得た治療と、人間が本来持っている「自然治癒力」です。体外受精は、たいへん人工的な技術と思われがちですが、じつのところ人間の手が及ぶのは、ほんの20%ぐらいで、あとは自然の力で妊娠するのです。

  つまり、体の中の自然治癒力を高めてこそ、先端医学は最大限の効果を発揮します。これが、クリニックの基本的な考え方なのです。自然治癒力とは、人間の「生命力」であり、それは「妊娠する力(妊娠力)」でもあるのです。

  現代は、日常生活のストレス、添加物の多い食品、環境汚染などによって、人間の自然治癒力はどんどん低くなっています。自然治癒力を阻害する、こうしたさまざまな要因を取り除くことこそが、不妊治療に何よりもたいせつなのです。先端医学は、ほんの手助けにすぎません。

  その方法として「水」と「海」の」力を借りよう、というのが、この本の趣旨です。一般的には、こういう治療法は、「海洋療法」(タラソテラピー)と呼ばれます。タラソテラピーというと、エステティックを連想する人が多いと思いますが、じつは、肌は脳と神経と密接につながっており、その脳と神経は、妊娠とたいへん深い関係があるのです。この詳しい関係については、拙著『ドクター森本の不妊は家庭で治せる』(ゴマブックス)もあわせて参照してください。

  
しぜんな妊娠力を高めるためには、まず心も体もリラックスすることがとてもたいせつです。治療のことで頭がいっぱいになり、治療そのものがストレスになってしまうと、まったく逆効果になってしまいます。つまり、治療のストレスが「妊娠しにくい体」をつくってしまうのです。こうしたストレスを抱えたまま、不妊治療を続けても、気持ちが辛くなるばかりで、なかなかいい結果は望めません。

  ストレスを取り除くためには、「イメージ療法」がたいへん有効な方法です。私たちのクリニックでも以前から行っているものですが、この場合、患者さんがもっともイメージしやすく、リラックスしやすいものが「海」なのです。

  人間の脳のいちばん外側にあたる「大脳新皮質」と呼ばれる部分は、日常のストレスで、過度の刺激を受けています。つまり、外側の大脳新皮質の感受性が敏感になりすぎているのです。そのため、その中にある、妊娠と関係のある「大脳旧皮質」(動物脳)がうまく働かなくなっているのです。ゆったりとした気持ちで海をイメージすることによって、さまざまな刺激をやわらげ、本来の生殖能力がよみがえってきます。海のイメージには、とくにこうした作用が大きいのです。

  潮騒の音にも同様の効果があります。実際に海辺に行ってのんびりするのがいちばんいいのですが、潮騒の音をCDなどで聴きながら海をイメージするだけでも、十分なリラクゼーション効果があります。心身ともにリラックスして、全身の新陳代謝が良くなることは、そのまま「妊娠力」をよみがえらせることなのです。

  また、体内の環境を整えるためにも、海と水は大きな力を発揮します。海藻などをはじめとした、海の恵み」を上手に食卓に取り入れていくことは、あとの章で詳しくお話ししますが、体内の悪玉である「活性酸素」を減らしてくれる点でも大きな効果があります。魚介類やワカメなどに含まれる良質のタンパク質、ハマグリやカキに多く含まれる鉄分、海藻類に多いセレニウムなども、活性酸素を取り除き、妊娠体質をつくってくれる強い味方です。

  そのうえ、日常飲む「水」もまた、妊娠と深い関係があります。人間の体の70%が水分なのですから、この水分が「いい水分」であることが重要です。

  日常生活で、つねに正しい水分補給を心がけて、水分代謝を高め、いつも新鮮な水分が体を満たしていることは、健康の基礎でもあります。適切に補給していけば、体内の水分は2〜3日ですべて入れ替わるとも言われます。

  最近は、良質のミネラル分を大量に含む、「海洋深層水」も手にはいりやすくなりました。水分を補給して体内の水分代謝を高めるのと同時に、ミネラルを摂取することによって活性酸素を減らす効果もあるのです。

  
水と海は、「リラクゼーション効果、栄養上の効果、体内代謝を高める効果」と、人間が本来持っている自然な力をめざめさせるために必要なものを、すべて持っているのです。人間は海から生まれ、水とともに生きる生物です。海と水の力を借りることによって、人間本来の生命力、治癒力、そして妊娠力が高まるのは、とてもしぜんなことではないでしょうか。

  
子宝に恵まれるためには、私たちはもっと身近な生活環境を見直すことが、とてもたいせつです。ともすれば、当たり前すぎて見すごされがちなことこそ、人間がこの地球で生きるためには、とても必要なことかもしれません。

  私は、こういった「水と海の不思議な力」を、不妊治療に応用することができたらとずっと考えてきました。そこで、海洋生物学者のジョージ・オカガキ君の力を借りて、このアイデアを実行することになりました。ジョージ君は、アメリカ西海岸で活躍する海洋ジャーナリストで、タラソテラピーをはじめとするさまざまな海洋療法を研究しています。

  また私は、大阪の難波というところに、「海」をテーマとした「IVFなんばクリニック」をつくることにしました。このクリニックは、いたるところに海に関するテーマを表現して、海のエネルギーが赤ちゃんの魂を呼び込むように設計されています。「不妊と生きる」ということは、ひょっとすると「人間本来の生き方を思い出される」ことではないでしょうか。本書が、あなたの「妊娠力」をめざめさせ、夢の実現のお手伝いができれば幸いです。

2003年8月

森本義晴
「水」でめざめる妊娠力を買う



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著者:森本義晴
ジョージ・オカガキ
出版社:ゴマブックス